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月させば梅樹は黒きひびわれと
なりてくひこむものか空間に

森岡貞香 『白蛾』

「梅樹」は「ばいじゅ」と読む。やわらかな「うめ」とは違い、硬い物質感のある言葉である。さらにこの歌の下の句には、「なりてくひこむ/ものか・くうかんに」と、句割れや倒置が用いられ、ぎしぎしとした独特のリズムを持っている。「黒きひびわれ」や「くひこむ」といった把握にも、空間をねじ曲げようとするような、暗い力が感じられる。月の夜の梅の樹は、静かに立っているが、その内部には、なまなまとした存在感が秘められている。この歌を読むと、樹のほうから人間に触れてくるような奇妙な感覚が伝わってくる。風景や物体に対する畏怖のようなものを、森岡貞香は生涯を通して表現し続けた。

吉川宏志

写真:前田康子

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