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  声明
ロシアによるウクライナ侵攻に対するメッセージ
令和4年3月17日
現代歌人協会理事有志
栗木京子
二十一世紀の今、かくも愚かな暴挙がなされたことに慄然とする。まさに言葉を失うロシア軍のウクライナ侵攻だが、私たちは言葉をもって抗議し続けねばならない。
国家や権力や経済の枠を超えた、これは命の尊厳の問題である。
坂井修一
ロシアによるウクライナ侵略 ― 暴力によって他国民の命と財産を奪うこと。自国を含めて人々の言論の自由を封殺すること。核兵器の使用をちらつかせて世界の人々を恫喝すること。絶対にあってはならないことであり、21世紀を生きる一人の人間として、また表現者として決して看過できないことです。一刻も早く戦争が終結し、人権、文化、産業、言論が本来あるべき姿に回復することを切に願ってやみません。
沖ななも
武力で人の自由を、命を奪うなどあってはならない。ましてや核兵器などもってもほか。もっとも卑怯で残虐な方法を選んだことは暴挙としか言いようがない。なぜ、何の罪も無い人たち、子供や嬰児さえ命を落とさなければならないのか。武力攻撃を一日も早く止めよ。
人はいつでも平和で自由で、幸せであるべきだ。
内山晶太
いかなる背景があるにしてもロシアによるウクライナ侵攻は一般市民に対する理不尽で巨大な暴力であり、肯定の余地はありません。ウクライナの皆さんに平穏な日々が戻ることを願います。
梅内美華子
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に反対します。攻撃によって土地、町が壊され人々が恐怖にさらされ亡くなった人も多数います。暮らし、文化、そして第一に人の命が奪われる戦争はいかなる理由によってもあってはなりません。ロシア国民の生活や命も危機にさらされています。第二次世界大戦、太平洋戦争の傷と反省を私たち日本人は持っています。ウクライナの痛みはそのまま私たちのものでもあります。いますぐ停戦し平和的解決を目指してください。
大松達知
防ぎようがない、だれも助けてくれない。そんな現実があることに恐怖する。武力とか国防とかミサイルとかいう言葉に現実味があることに驚愕する。遠くにあるはずの言葉が振動音とともにいきなり街に入ってくる。どうにも想像できないまったくの理不尽さ。いや想像して祈るのみ。そんな間にも人々の心と体と時間が奪われている。とにかく関わりつづける気持ちだけは持ちたいと思う。
春日いづみ
武力により他国を侵攻することは、目に見える惨状の何百倍もの、幾世代にもわたる心身の傷を負うことになり、その禍根は連鎖となって広がります。
今、すべての国の為政者は自国の利益ではなく、地球規模の、人類の行く末に目を向けるべきです。ドストエフスキーやトルストイを生んだロシア、その地に住む人々の心を信じています。反戦を訴えることを願うと共に、ウクライナを逃れた人々の力になりたいと思っています。
加藤英彦
小学校が、産院や小児科病院がミサイル攻撃され、原発施設への砲撃がくり返された。どのようなイデオロギーをもってしても正当化しえない蛮行にウクライナが晒されている。それは全地球をあげて非難すべき悪∴ネ外の何ものでもない。双方に増大する死者たちは、何のために死なねばならないのか。
今月、レーニン像の足もとにつもった雪の上に「戦争反対」と書いたロシア市民が逮捕された。国家的殺戮はいつも言論の封殺と偽情報の氾濫を伴ってあらわれる。どのような理由であれ、こんなこと絶対に許してはならない。
小島ゆかり
季節の風を感じて、いつも食べているものをおいしく食べて、家族や仲間とおかしなことで笑い合う。そんな幸福がウクライナの人たちに一日も早くもどることを、つよくつよく願います。
高木佳子
火炎瓶を作る女たち。作らせているものは「何」なのか。女たちが作るのは今晩の温かい食事、子どもに向けるのは笑顔、瓶に差すのは一輪の花でなくてはならない。
平和を強く求めます。
千葉聡
人が人を殺すことに大義名分を与えてはいけません。
  戦争をその手にさせるな 教科書に縦長ハートを書く白い手に
富田睦子
そのほかに二十余名が死すと伝ふ「そのほかの人」生きたかりけむ  柳宣宏『施無畏』
目を背けたくなるような情報が流れてきます。今何が起こっているのかは後に検証されるのでしょうが、それがどうあれ傷つけられているのはひとりひとりの人間です。
一方で、そうした個人から発せられる声が大きな力となっているとも聞きます。言葉を用いる者として何ができるか、その恐ろしさも含めて常に考えていたいと思います。
中川佐和子
ロシアによるウクライナの侵攻が続き、ウクライナの悲惨な映像や悲痛な声を目の当たりにして、これが現実に起きているのかと思うと、慄然とすると同時に強い憤りを覚えます。今ロシアが速やかに停戦して、平和が再び取り戻されることをひたすら願います。
東直子
この状況に対して何を言えば正解なのかは分かりませんが、ロシアの不条理な侵攻に関してはとにかくNOを伝え続けたいと思います。このままとりかえしのつかない暴力の炎となる前に食い止めるための水の一滴として、すべての人、一人一人がそれぞれの平和な朝を迎えるための権利を守るため、反戦の意を伝えます。
藤島秀憲
春の日の差せば埃は地球儀を覆いておりぬ北緯高きを
この歌を作ったのはロシアがウクライナに侵攻を始める前だった。
そして侵攻が始まり、読んだ人に訊かれた。「ロシアとウクライナのこと」「立ち込める暗雲を埃に喩えてますね」。
いや、そうじゃなくて単なる埃の話、春になると汚れって気になるでしょ、日常の些事ですよ……と答えようとしてやめた。
この日常が突然壊されることだってあるから。遠い国の出来事とは思えない。
吉川宏志
どんな言い訳をしても、他国を武力で侵略することは、決して許されません。民間人が深刻な被害を受けている映像に、胸が疼きます。独裁者の戦争を誰も止められず、これほど無力さを感じることはありませんが、自由と民主のために、言葉の優しさと批判する精神を、これまで以上に大切にしてゆく必要があると思います。そして、核兵器が生み出す狂気に、心の底からおびえています。困難な道ですが、核兵器廃絶を進めていかねばなりません。人類が生き残るために。
 
日本学術会議の新会員任命拒否に反対する声明
令和2年10月26日
現代歌人協会理事長 栗木京子
日本歌人クラブ会長 藤原龍一郎
 私たち現代歌人協会と日本歌人クラブは、菅義偉首相が、日本学術会議の6名の新会員の任命を拒否したことに、強く抗議します。 
 日本学術会議の新会員は、「(選考委員会の)推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」(日本学術会議法)と定められており、「これは、学会あるいは学術集団から推薦に基づいて行われるので、政府が行うのは形式的任命にすぎません。」(第98回国会 参議院文教委員会 昭和58年5月12日)と、中曽根康弘内閣総理大臣(当時)も明言しています。
 今回、菅義偉内閣総理大臣が任命拒否したことについて、〈日本学術会議法の解釈変更を行ったものではない〉という主旨の答弁を、10月7日の衆議院内閣委員会で内閣府副大臣が行っていますが、これは明らかに非合理的な発言です。
 また、6名の新会員の任命を拒否した理由を、菅政権は明確にしていません。これは不誠実な態度です。
 このような、非合理かつ不誠実な政治の言葉が許されるならば、日本語ひいては国民相互の信頼性が大きく毀損されます。私たち、短歌という日本古来の言語芸術に関わる表現者は、こうした言葉を看過できません。物事の道理にそった言葉を尊重する政治を、私たちは切実に求めてきました。
 日本学術会議は、戦時中に、科学者や研究者が戦争を推進する国家に協力してしまったことへの反省に基づいて設立されました。そのため、「政府から独立して職務を行う『特別の機関』」と位置づけられています。これは、日本国憲法第23条で定められた「学問の自由」を基盤としています。今回の任命拒否は、学術会議の独立性、さらには「学問の自由」を脅かす政治的手段として見逃すことができません。
 短歌の世界でも、昭和15年(1940年)に大日本歌人協会が、国家に協力的でない会員がいると非難されて解散に追い込まれる事件がありました。今であれば、これは日本国憲法21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」に抵触します。表現者にとって、この条文は、個々の自由な言語表現を保障するとともに、現代歌人協会や日本歌人クラブのような職能機能を含む短歌活動の自由を保障するものでもあります。
 くしくも今年は、大日本歌人協会の解散から、80年になります。私たちはこのような過去を忘れず、科学者や芸術家などの文化団体に対する政治の介入に、厳しく抗議しなければならないと考えます。
 今回の任命拒否をきっかけにして、政府に逆らう学者や研究者は排除すべきだ、という短絡的な言説も出てきました。ここから、政府に逆らう表現者(歌人を含む)は排除すべきだ、という風潮までは、わずかな距離しかありません。それは、日本ばかりでなく、世界の歴史を振り返れば明らかです。すなわち国の健全な学問や文化の発展を根本から瓦解させるものとなります。
 任命拒否を速やかに撤回し、今回の問題を分かり易い言葉で国民に説明してください。政治に対する健全な批判が自由闊達に行われる社会を実現することを、私たちは菅政権に要請します。

以上

 
高校新学習指導要領・大学入学共通テストについての声明
2019年5月10日
現代歌人協会理事長 大島史洋
日本歌人クラブ会長 三枝ミ之
 2022年度から施行される新「学習指導要領」と、2021年から実施される「大学入学共通テスト」は、高等学校「国語」の教育を大きく変えようとしています。
 これらの改革は、以下に述べるように、短歌を含む現代文学を軽視したものと言われてもしかたのない内容となっています。

1. 新指導要領においては、主に1年生で履修することになっていた「国語総合」(標準で週に4時間)が「現代の国語」(2時間)、「言語文化」(2時間)に分かれます。指導要領解説においては、「現代の国語」では、話し合い、意見発表、資料やデータの読み方、など実用的な言葉について学ぶことがうたわれています。「言語文化」は主に文学を扱いますが、「読むこと」の授業の中で、古典は40〜45単位時間かけて扱うのに対して、近代以降の文章は20単位時間程度扱うこと、という配分が決められています。文学を扱う時間が週に2時間の「言語文化」に限定されるだけでなく、さらにこの時間の中の限られた一部を使って、明治以後の文学を学習することになるのです。伝統を受け継ぎ、今まさに豊かな様相を呈している短歌が授業で取り上げられることは、ますます難しくなると想定されます。

2. 同じく新指導要領において、主に2年生、3年生で履修することになる選択科目でも、現代文学や古典を扱う科目は用意されていますが、3に述べる大学入試(国語では資料の読み取りなどが増える)に対応することを考え、実用的な言葉を扱う科目を選ぶ生徒が多数を占めると考えられます。

3. 「大学入学共通テスト」の試行調査における「国語」問題では、現代国語の問題として、著作権法や生徒会活動規約など実用文の論理的読解が大問として出題されていますが、これはノウハウ的な能力偏重の教育を促すことになると懸念されます。

4. 高校教育では、生徒たちが心の自由を保ち、創造力を養ってこれから社会人として生きる力を身につけることがたいせつであり、現代国語がその役割の大きな部分を担っています。文学だけの問題ではなく、近未来のこれからの社会において人々がよりよく生きるためには、現代の文学に向き合う時間のなかから、この「創造力」「生きる力」を培うことが重要です。

 すでに、日本文藝家協会では、「高校・大学接続『国語』改革についての声明」を2019年1月24日に出して、この問題に取り組んでいくことを明言しています。現代歌人協会と日本歌人クラブでは、この国で最も伝統ある文芸である短歌というジャンルを今に担う独自の立場から、この問題に取り組んでいくことをここに表明いたします。
 私たちは、古事記・日本書紀や万葉集以来の伝統の上に立って、新しい時代にふさわしい文学・文化を築き続けることを自分たちの役割と思っています。そのためには、短歌を含む近代文学・現代文学の基礎を高校時代に教育することが必須と考えます。
 この問題は、歌人に限らず、また文芸家に限らず、広く日本語を使い、日本文化を土壌とする社会全体の問題、これからの社会を実り豊かなものにしたいと考える日本人全体の問題と考えます。ぜひ多くの方々に賛同していただき、いっしょに良い方向性を見いだしていきたいと切望いたします。

以上

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