現代歌人協会は、1956年に結成された歌人の職能団体です。2020年に法人化し、「一般社団法人 現代歌人協会」となりました。

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とても小さな靴下が落ちてゐる
渋谷の秋の谷底にゐる

睦月都 『Dance with the invisibles』

落ちていた小さな靴下を目にした渋谷の雑踏から、急に深い谷底へと迷い込んでしまったかのような印象を受ける歌だ。渋谷の街の地形は文字通り谷になっており、駅の周辺は谷底にあたる。「渋谷の谷底」なら現実の風景だが、「秋の谷底」でもあるところがポイントなのだろう。秋は下降の季節であり、気温もぐんと下がり、日照時間も短くなっていく。この歌では、季節だけでなく、靴下が道に落ちたことも、靴下へ落とす視線も、渋谷の地形も、すべてが下向きのベクトルになっており、それが滑り落ちていくようなイメージを引き起こすのだろう。気づけば深い谷底にひとりたたずみ、辺りにあるのはとても小さな靴下だけ。そんな心もとなさが、結句の「ゐる」に滲んでいる。

田村元

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