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(平日10時〜16時)
  現代歌人協会主催  − 現代短歌大賞 −
現代短歌大賞は、前年 10 月からの1年間に刊行された歌集・歌書等を対象とし、その最も優れた著作を本協会が顕彰するものです。
例年、12月に東京・学士会館で授賞式が行われます。

第46回(2023年) 現代短歌大賞 該当作なし

特別賞 竹柏会「心の花」
「心の花」は1898年(明治31年)に佐佐木信綱が創刊。以降、佐佐木家の治綱、由幾、幸綱が編集・発行人となり現在に至る。2023年に創刊から125年を迎え、通巻1500号を発行した。近代から現代に至る流れの中で時代を先導する歌人を常に輩出し、短歌(和歌)史の研究とともに後進の育成にも力を注いできた功績は特筆すべきものがある。
選考委員は栗木京子・坂井修一・大松達知・穂村弘。

第1回(1978年)
佐藤佐太郎 『佐藤佐太郎全歌集』 (講談社1977年)

現代短歌大賞は、新人賞的性格をもった従来の現代歌人協会賞に加え、歌集に限らず広く歌論、歌集、研究にまで範囲をひろげた賞を創設することにより一層の現代短歌推進に寄与するものである。佐藤氏のすぐれた業績は第1回の授賞にふさわしく、この大賞の意義と将来への期待を大きく持たせたことであった。
選考委員は上田三四二・大岡信・五島茂・木俣修・篠弘。
第2回(1979年)
佐長沢美津編 『女人和歌大系』全6巻 (風間書房1962〜1978年)

はじめて日本の女性の和歌に関する系統的な資料を収集したもので、記紀歌謡から昭和20年までにわたり1100人、約八万首の作品が収録された。まず量において驚異的であるとともに、その質において、じつにゆきとどいた研究調査を遂げられて、まことに信頼すべき文献資料となった。
選考委員は上田三四二・大岡信・五島茂・木俣修・篠弘。
第3回(1980年)
該当作なし

第4回(1981年)
五島茂 歌集三部作 『展く』 (白玉書房1979年)
『遠き日の霧』 (白玉書房1980年)
『無明長夜』 (石川書房1980年)
視野の広い熱情的な作歌活動が評価されるとともに、歌人協会に寄与したかぎりない功績もあわせて評価された。前二冊のロバート・オウエン研究というライフワークと重なる生活の重量感、また『無明長夜』の妻・美代子氏の入院から長逝に至るまでの限りない悲嘆の肉声、そのスケールの大きな人間表現は歌壇に示唆的である。
選考委員は上田三四二(欠席)・近藤芳美・五島茂・篠弘・長沢美津。
第5回(1982年)
木俣修 『雪前雪後』 (短歌新聞社1981年)

数年来健康すぐれぬなかで無理を押して出版された第十四歌集。直接の対象は『雪前雪後』であるが木俣氏の足跡は作品のみならず研究分野においても著明なものがあり、それらの長年にわたる全業績をもあわせて顕彰することとなった。
選考委員は近藤芳美・五島茂・長沢美津・上田三四二・篠弘。
篠弘 『近代短歌論争史 明治・大正編』 (角川書店1976年)
『近代短歌論争史 昭和編』 (角川書店1981年)

著者の半生を傾けた大著。「尾上柴舟をめぐる短歌滅亡議」に始まり「戦時詠の本質をめぐる論争」に終わる60余章、さらに補論としての終章では戦後短歌、現代短歌に及ぶ。膨大な資料を集め、整理し、その論述の公正と細密は何人も成し得なかったものである。
選考委員は近藤芳美・五島茂・長沢美津・上田三四二・篠弘。
第6回(1983年)
山本友一 『日の充実』『続・日の充実』 (新星書房1982年)

5月と7月、2ヶ月の期間をおいて刊行されたことから連続した大冊と受け取った。すなわち1972年から1981年までの9年間の作品1323首を公にされている。素材の特性を生かす感性と表現力に支えられた作歌力の強靭さは定評があるのものである。理事である立場から辞退されようとしたが最も適当な対象であることから説得し、受諾された。
選考委員は上田三四二・近藤芳美・斎藤史・篠弘・高安国世。
第7回(1984年)
大野誠夫 『水幻記』 (雁書館1984年3月)
高安国世 『光の春』 (短歌新聞社1984年6月)
この賞は今まで物故者を対象としておらず、はじめ今年2月逝去された大野氏を対象とするかが議論された。7月に逝去された高安氏の『光の春』は本来来年度の対象でありこれも議論されたが、両氏の戦後歌壇における功績を鑑み、しかもそうした活躍に反してしかるべき賞を受けなかったことから、今回に限って異例の授賞とした。この二人の受賞は偶然のことであるが、これまでの業績に敬意を表し、大賞の名にふさわしいものとなった。
選考委員は扇畑忠雄・岡井隆・近藤芳美・斎藤史(欠席)・篠弘
第8回(1985年)
土屋文明 『青南後集』 (白玉書房1984年)

昭和48年(83歳)から昭和58年(93歳)までの11年間の短歌1285首が収録される。戦後東京の青山南町に帰り住むようになってからの歌集には『青南集』『続青南集』『続々青南集』の三冊がありきわめて自由自在な豊かな歌境を展開してきたが、『青南後集』に至ってまた一層の自由闊達、より深い境地に達した。長男と夫人を喪うという不幸に直面し、孤独に耐える老いの心情が呟くようにうたわれいっそう自在なものとなっている。
選考委員は上田三四二・扇畑忠雄・岡井隆・篠弘・馬場あき子・山本友一。
第9回(1986年)
中野菊夫 『中野菊夫全歌集』 (短歌新聞社1985年)

戦後から一貫して清潔なリアリズムを推進。やわらかな感性の深まりと知性に富んだ抒情が調和する。ひたむきな作風には人間味の溢れてやまないものがある。「人民短歌」の創刊をはじめ、戦後歌壇の立役者の一人であるとともに、労働者や病者の作歌活動を地道に支援し、多くのアンソロジー編集にも参画する。
選考委員は、上田三四二・扇畑忠雄・岡井隆・馬場あき子・山本友一・篠弘。
加藤克巳 『加藤克巳全歌集』 (沖積舎1985年)

戦前の新芸術派の運動に参加した独自の出発から始まり、戦後の新歌人集団等の運営に大きく寄与した。定型とともに口語自由律の発想を駆使して、人間の深層心理の掘り起こしや、幻想的な詩的空間を作る、ユニークな存在。評論活動も活発で新歌人集団の位置づけをはかり、かつ若い世代の試行に対してつねに客観的なゆきとどいた表現を続けてきている。
選考委員は、上田三四二・扇畑忠雄・岡井隆・馬場あき子・山本友一・篠弘。
第10回(1987年)
該当作なし

第11回(1988年)
窪田章一郎 『窪田章一郎全歌集』 (短歌新聞社1987年)

戦中・戦後以来の道をおおらかに、しかも地道に進んできた歌風はたいへん品格をもち、平凡な日常の中に生きる意味を見つめ、飾り気なく表現する。人生や生命を肯定するこの作風は今日において大切であり、生活実感に根ざしたリアリズムの立場を築いている。
(選考委員記録なし)
第12回(1989年)
該当作なし

第13回(1990年)
該当作なし

第14回(1991年)
近藤芳美 『営為』 (六法出版1990年)

教職を離れいわば自由人となってからの初めての歌集。時代に対するいっそう痛切な視点や、モチーフの広がり、苦渋に富んだ文体の確立などにおいて一つのピークになり得るものである。これに過去の重い仕事を加えて評価し、選考委員の一致により決定した。
選考委員は、山本友一・篠弘・馬場あき子・岡野弘彦・宮地伸一。
第15回(1992年)
香川進 『香川全歌集』 (短歌新聞社1991年)

口語自由律から出発した作者が、それを活かしながら源流を踏まえた新しさを絶えず追求してきた実績が評価される。戦争体験を詠んだ作品にしても人生をつらぬく芯の太さが感じられ、また東南アジア、インドなどに取材した世界も短歌にとって新しいものであるスケールの大きさがあらわれる。現実と抗いつづけたプロセスの重さが、あらためて認識させられる。
選考委員は、長澤一作・宮地伸一・吉野昌夫・山本友一・篠弘
第16回(1993年)
恂{邦雄 『魔王』 (書肆季節社1993年)

かつて恂{氏は1959年度第3回現代歌人協会賞を受賞しており、重ねて大賞となった初めてのケースである。現代の詩としての短歌の魅力を率先して昇華した歌人であり、幻想的な美意識を獲得する。その卓抜した修辞力は稀有なるものがある。短歌で詠み得る世界をひろげ、抒情の質を変革した営為は、世代や系列を超えて大きな影響を与え続けている。
選考委員は中野菊夫・岡井隆・篠弘・岡野弘彦・島田修二。
第17回(1994年)
該当作なし

第18回(1995年)
岡井隆 『岡井隆コレクション』 (既刊3巻まで・思潮社1994年)

全8巻の『岡井隆コレクション』の3巻刊行時ではあるが、既刊の『岡井隆全歌集T・U』を含む今までの全業績に対して委員全員の意見が一致しての大賞受賞となった。論・作において岡井氏の業績はもはや言うまでもない。
選考委員は加藤克巳・宮英子・武川忠一・宮地伸一・佐佐木幸綱
第19回(1996年)
扇畑忠雄 『扇畑忠雄著作集全8巻』 (おうふう1995〜1996年)

著者専門の万葉集研究、「アララギ」の中枢歌人としての子規・茂吉・憲吉・文明を中心とした研究、さらに現代歌人として昭和初期より平成の今日にいたるまで冴えた詩心のもとゆるぎなき堅実な作風をはじめて一括公表した。現代短歌に確固たる業績を残した意義は大きく、加えて東北歌壇の育成発展、ならびに日本現代詩歌文学館館長として詩歌壇に広く尽くしてきた功績は大賞に最もふさわしい。
選考委員は、加藤克巳・佐佐木幸綱・宮地伸一・宮英子・武川忠一。
第20回(1997年)
斎藤史 『斎藤史全歌集』 (大和書房1997年)

『斎藤史全歌集』は1977年にも刊行されたが今回はその後の2歌集を加えた集である。氏の『現代短歌入門』、および斎藤史小論として初期より現在までの歌集のそのつどの批評を再録したものを別冊とした大きな全歌集となっている。戦前戦後を通じての美しい実りとして重厚な一冊である。
選考委員は、岡井隆・中野菊夫・武川忠一・森岡貞香。
第21回(1998年)
該当作なし

第22回(1999年)
清水房雄 『老耄章句』 (不識書院1999年)
『斎藤茂吉と土屋文明』 (明治書院1999年)
『老耄章句』に限らず、そこまでに至る歌集はすべて、「アララギ」の選者として、また、第二次大戦をまともに受けとめた世代の一人として労苦や痛憤をこめた戦後の生の軌跡を示したものとして、わたしたちに深い感銘を与える。現代を生きる老齢者の嘆声をも、したたかなアイロニーをまじえながら開陳している。
選考委員は岡井隆・森岡貞香・加藤克巳。
第23回(2000年)
森岡貞香 『定本 森岡貞香歌集』 (砂子屋書房2000年)

森岡氏の歌は『白蛾』以来注目を浴びて来たが、その歌の特徴は日常的な事象をとらえて、非日常的また形而上学的な深みあるいは高みへと拉致し去ってゆく一種の膂力にある。ときには破調を恐れぬ韻律の冒険者ぶりは、むしろ天性のものとも言える。
選考委員は岡井隆・篠弘・加藤克巳・春日真木子。
第24回(2001年)
玉城徹 『香貫』 (短歌新聞社2000年)

その作品はよく知られていて、歌壇外からの評価も高く現代歌人の最高の存在の一人といってもよい。また、近世歌人や、芭蕉、虚子を論じた著書によっても、その評論はすぐれたものとされている。氏は当時、現代歌人協会員ではなかったが、その点は問題とならなかった。
選考委員は岡井隆・篠弘・清水房雄・春日真木子。
第25回(2002年)
馬場あき子 『世紀』 (梧葉出版2001年)

以前よりいくたびも有力視されてきた受賞者。流暢な調べを生かした、生命力にとんだ歌風は、今日における女性短歌を牽引する存在である。集中の出水の鶴に着材した一連は、危うい環境と抗う人間の生死を暗示するものとして注目される。
選考委員は篠弘・加藤克巳・清水房雄・森岡貞香。
第26回(2003年)
前登志夫 『流轉』 (砂子屋書房2002年)

吉野の風土を詠んだ作風は一貫したもので大変魅力的であり、近代の短歌以来においても、きわめて前例のない主題であった。これまでの氏の業績、現代短歌に果たしてきた役割は大きく、あわせて討議すべき歌集についてとくに委員からの提案はなく、スムーズに受賞作が決まった。
選考委員は篠弘・清水房雄・森岡貞香・馬場あき子。
第27回(2004年)
佐佐木幸綱 『はじめての雪』 (短歌研究社2003年)

佐佐木氏の大柄で、奔放な闊達な作風はすでに定評があり、『はじめての雪』にこれまでの業績を加味することで全員一致の賛同となったが、六十歳代の受賞は久しぶりのことであった。同歌集は山本健吉文学賞とダブル受賞するところとなった。
選考委員は篠弘・清水房雄・森岡貞香・馬場あき子。
第28回(2005年)
該当作なし

第29回(2006年)
岡野弘彦 『バグダッド燃ゆ』 (砂子屋書房2006年)

戦中派として生きた痛みをもち、爛熟した現代を呪うところから始まり、義憤にみちた文明批評がこの歌集の基調となっている。現代の歌人は、日常の瑣事に拘りがちであるが、大柄な詩想による「概念歌」の試みは、近代からの課題、難題となって今日に至っている。この大賞受賞作が暗示するものは、けっして小さなものではない。
選考委員は篠弘・馬場あき子・佐佐木幸綱・清水房雄。
第30回(2007年)
武川忠一 『窪田空穂研究』 (雁書館2007年)

事前に候補作を委員から聴取したが、武川氏の著作活動が突出していて、あわせて吟味する作品は議論されなかった。氏の大著の空穂論は、半世紀に垂らんとする持続力的な労作である。作風は地味であったが、人間の生き方の深処にふれた、箴言にみちた空穂の歌の確かな復活の兆しを、『窪田空穂研究』が実証してくれた。
選考委員は篠弘・岡野弘彦・馬場あき子・佐佐木幸綱。
第31回(2008年)
島津忠夫 『島津忠夫著作集』全十五巻 (和泉書院2007年)

氏は連歌研究の第一人者として知られ、現代短歌にも深くかかわり、現代歌人集会理事長もつとめられた。『島津忠夫著作集』は全十四巻、別冊一巻からなる大部なものである。日本詩歌史全体の研究・批評を背景に置きつつ、中で、第九巻『近代短歌史』は与謝野晶子、前川佐美雄といった関西の歌人に多くのページを割いて特色を出している。
選考委員は佐佐木幸綱・馬場あき子・篠弘・永田和宏。
第32回(2009年)
三枝昂之 『啄木―ふるさとの空遠みかも』 (本阿弥書店2009年)

受賞作は一次資料をていねいに押さえ、また最新の研究成果を踏まえて、啄木に今日的な光を当てた労作である。とくに小説への情熱と悲しき玩具としての短歌との関係を克明に押さえて、啄木の短歌の「平熱の歌」の基底部を解明した功績は大きい。
選考委員は佐佐木幸綱・馬場あき子・篠弘・永田和宏。
竹山広 『眠つてよいか』 並びに過去の全業績 (ながらみ書房2008年)

『眠つてよいか』は、晩年を強く意識した歌集で、鋭い感性によって、ときにユーモアと風刺をまじえて人生をうたうこれまでの作品に、いっそうの深みを加えている。加えてこれまでの業績も高く評価された。
現代短歌大賞特別賞
石黒清介「短歌新聞」の発行等歌壇に対する貢献
氏は昭和二十八年に「短歌新聞」を創刊。同五十二年に歌誌「短歌現代」を創刊、現在に至っている。これら新聞、雑誌の発行、さらに多数の歌集・歌書の刊行を通して、歌壇の活性化に大いに力を尽くされた。
選考委員は佐佐木幸綱・馬場あき子・篠弘・永田和宏。
第33回(2010年)
該当作なし

第34回(2011年)
岩田正 『鴨鳴けり』『岩田正全歌集』 (いずれも砂子屋書房2011年)
昭和三十一年に第一歌集『靴音』を刊行。以後長く評論活動に主力を置き、「土偶うたえる」をはじめ多くの問題評論を発表して、評論家として歌壇をリードした。昭和五十三年に馬場あき子と共に「かりん」を創刊し、後進の育成にも尽力している。
選考委員は佐佐木幸綱・篠弘・高野公彦・馬場あき子。
第35回(2012年)
該当作なし
「短歌研究」創刊号
(1932年)
現代短歌大賞特別賞
「短歌研究」
 「短歌研究」は昭和七年十月に改造社から創刊され、日本短歌社、短歌研究社、講談社と出版元は変わったが、雑誌は一貫して継続されてきた。各時代の「短歌研究」の編集者たちが短歌史で重要な役割を果たしてきたことは周知の通りであるし、「短歌研究」に掲載された作品・評論の数々が、現代短歌史の重要な部分を形成してきたことも衆目の認めるところである。
選考委員は佐佐木幸綱・馬場あき子・篠弘・高野公彦。
第36回(2013年)
宮英子 『青銀色』 (短歌研究社2012年)

大正六年生まれで、受賞時は九十六歳。『青銀色』は平成十九年に刊行された『やがて秋』につづく第五歌集である。中近東を旅行した折に、シリアの骨董屋で求めた小さな壺の、まか不思議としか言いようのない色に由来するタイトルである。折々に歌われた宮柊二追悼の歌も収録されている。
選考委員は佐佐木幸綱・馬場あき子・篠弘・高野公彦。
第37回(2014年)
蒔田さくら子 『標のゆりの樹』 (砂子屋書房2014年)

氏は昭和四年生まれ。昭和二十六年に「短歌人」に入会し、昭和二十八年から編集委員をつとめ、昭和三十年に第一歌集『秋の椅子』を刊行した。また、昭和六十年から十年以上にわたり「短歌人」編集発行人として長く活躍された。
選考委員は佐佐木幸綱・高野公彦・栗木京子・馬場あき子。
第38回(2015年)
伊藤一彦 『土と人と星』 (砂子屋書房2015年)
『若山牧水―その親和力を読む』 (短歌研究社2015年)
『土と人と星』はこれまで宮崎の自然風土へのふかい愛をうたってきた作者が、放射能で汚染された土への愛、何十年前昔に星を出発した光への愛をうたって新鮮である。また、『若山牧水―その親和力を読む』は現代社会の危機を打開する親和力を牧水作品に見ようとする力作である。
選考委員は佐佐木幸綱・馬場あき子・高野公彦・栗木京子。
第39回(2016年)
大島史洋 『河野裕子論』 (現代短歌社2016年)

『河野裕子論』は二年半にわたって「現代短歌」に連載されたもので、河野裕子の全作品を対象にした最初の単行本である。一首一首をていねいに読み込んだ労作で、同世代の歌人ならではの視点、同時代を生きた者の時代感覚が随所に見てとれる好著であり、これまでの氏の業績と合わせ、各委員の高い評価を受けての受賞となった。
選考委員は佐佐木幸綱・馬場あき子・高野公彦・栗木京子。
第40回(2017年)
永田和宏 『永田和宏作品集T』 (青磁社2017年)

受賞作は永田の十一冊の歌集(第一歌集『メビウスの地平』から第十一歌集『日和』)までを収め、二十代から六十代始めまでの五十年間の作品を見ることができる。なお、永田は同時期に評論集『私の前衛短歌』(砂子屋書房)も刊行している。永田の四十年間に渡って書かれた評論をまとめた一冊となっており、これまでの業績を振り返ることができる。
選考委員は大島史洋・佐佐木幸綱・伊藤一彦・栗木京子。
第41回(2018年)
春日真木子 『何の扉か』 (角川書店2018年)

第十三歌集『何の扉か』は従来の明晰かつ毅然とした表現に柔軟な遊び心が加わり、作品世界がさらに豊かになっている。老いを意識しつつも、そこから新たな実感や認識をつかみとろうとする姿勢は輝きに満ちている。まさに、次々に可能性の扉をひらいてゆく営為と言える。
選考委員は栗木京子・佐佐木幸綱・大島史洋・伊藤一彦。
第42回(2019年)
高野公彦 『明月記を読む』上下 (短歌研究社2018年)

受賞対象となった『明月記を読む』は藤原定家の日記「明月記」を実作者の視点から掘り下げ、当時の彼の暮らしや人間関係や時代背景に分け入ることで、人間味あふれる定家の実像を知ることができる。読み巧者高野氏ならではの文章で、古典和歌を学ぶ上で得るところが多い書である。
選考委員は栗木京子・佐佐木幸綱・伊藤一彦・大島史洋。
第43回(2020年)
久保田淳 『藤原俊成 中世和歌の先導者』 (吉川弘文館2020年)
『「うたのことば」に耳をすます』 (慶應義塾大学出版2020年)
氏の執筆による新古今和歌集の注釈や新古今歌人の研究などは長きにわたり現代歌人の貴重な指針となっている。また、今回の受賞対象である『「うたのことば」に耳をすます』は高い専門性を保ちつつ、自在な着眼点と美しい文章によって綴られており、示唆に富む考察は枚挙に遑がない。
選考委員は栗木京子・外塚喬・沖ななも・坂井修一。
第44回(2021年)
外恚ェ 『鳴禽』 (本阿弥書店2021年)
丁寧な省察と選び抜かれた措辞によって日常の哀歓を詠む。心情の襞を描写に託すことで、亡き父母や師や友への思いは静かな照り翳りを帯びる。妻の歌の含羞とユーモアなど、じつに滋味深い歌境と言えよう。〈母のこゑきけなくなるに砥部焼の鈴の奥よりこゑしぼりだす〉〈仲よしの夫婦と人は見るだらう散歩の途次のアイスキャンディ〉
選考委員は栗木京子・小島ゆかり・坂井修一・穂村弘。
第45回(2022年)
小池光 『サーベルと燕』 (砂子屋書房2022年)
母や弟の死に遭遇した70代前半の日々の起伏を平明な表現で描く。その一方、該博な知識をもって斎藤茂吉の短歌に触れたり、コロナ禍を詠んだ歌も心に残る。また、深い味わいの人物描写が彩りを添える。〈おとうとが好みて呑みし「浦霞」宮城の酒ぞかなしくもあるか〉〈ミケランジェロ「ピエタ」の指にもウイルスはひめやかにして迫りつつあり〉
選考委員は栗木京子・小島ゆかり・坂井修一・穂村弘。

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